ちょっと調べもの:脳波の測定について
はじめに
私自身の興味が元々ロボットと脳科学の交差点にあって、今はロボットを扱っていますが、そろそろ脳科学分野にも取り組みたいなと考えています。まずはセンサーで脳波を取得したいところです。
OpenBCIという、脳波を測定できるハードウェアでオープンソース化しているものがあります。
▼日本語のスタートアップガイドのページがありました。
▼ありがたいことに、実際にOpenBCIを使われた方の記事があります。
https://note.com/deriba/n/ndaeefc3c9479
本当は購入して試したいところですが、必要なもの一式で見積もりを出してもらうと、学生の私にとっては高額でした。特にデータを集めるための基板が高額だったのですが、自分で設計すれば安いのでは?ということで、今回は情報収集です。
▼OpenBCIの販売ページがありました。16チャンネルだと30万円以上します。
▼基板のデータは公開されています。
https://docs.openbci.com/Cyton/CytonSpecs/#openbci-cyton-board-circuit-schematic
▼ZMPという脳波計の記事もありました。
▼最近購入したVRゴーグルの視覚フィードバックによる脳波の変化を見てみたいところですが、VRゴーグルと一体化したようなデバイスもあるようです。
脳波の測定方法
脳波の測定方法には大きく分けて二つあって、脳に直接電極を埋め込む侵襲方式と、体外から測定する非侵襲方式があります。fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)による測定も非侵襲方式です。
さすがに個人で侵襲方式の測定を試すわけにはいかないので、今回は非侵襲方式で大掛かりでないものについて調べています。
▼測定方法の分類は以下の記事でも紹介されています。
https://www.macnica.co.jp/business/ai/manufacturers/innereye/135742
▼脳波の測定から解析までの流れは、以下の記事が分かりやすかったです。
https://www.miyuki-net.co.jp/jp/web_seminar/IntroductionToEEG
色々調べたところ、脳波の測定はノイズ対策や解析が大事になりそうだと感じました。マイコンで集めたセンサーデータの処理に似ています。
▼以下の記事ではフーリエ変換による脳波解析について紹介されていました。
https://www.pgv.co.jp/nais-entry/case-study/-0#post-1
▼電源ノイズに関して面白い記事がありました。例えば関東でAC電源を利用したときの信号を解析すると、50Hz付近にピークが見られるようです。
https://www.macnica.co.jp/business/ai/manufacturers/innereye/136896
脳波の電圧と周波数
筋電を利用したデバイスを開発されている方から聞いたのですが、脳波を測定するときに顔の筋肉が動くと、ノイズになってしまうようです。その方のデバイスでは奥歯を噛んだときのおでこ付近の筋電を取得していたので、どこを動かしてもノイズになる可能性があります。
脳波は数μV~数十μVで変動します。筋電の場合は数mVなのでもっと小さいです。
▼以下の記事では、実際の波形とともに脳波の振幅が紹介されていました。
https://naraamt.or.jp/Academic/kensyuukai/2005/kirei/nouha_normal/nouha_normal.html
▼50Hz以下の周波数を測定できれば、脳波の種類が分かりそうです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isciesci/62/2/62_76/_pdf
▼特徴的な周波数の脳波については、以下の記事でも紹介されていました。
https://www.macnica.co.jp/business/ai/manufacturers/innereye/135664
閉眼時の脳波の解析結果が10Hz付近になっているかどうかで、そもそも脳波を取得できているのかを確認できそうです。
なお筋電位の場合はリファレンスを取ることがあるようです。
▼筋電位センサとして販売されているものがあります。
Advance Guideを見ると、筋肉の位置でも周波数スペクトルが異なるようです。
サンプリング周期とサンプリング周波数
アナログ信号をデジタル信号に変換するときは、サンプリング定理(標本化定理)を考慮する必要があります。確か大学の制御工学の授業で聞いたと思います。
▼以下の記事でFFTと標本化定理について詳しく解説されていました。
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/basic/142820
▼こちらの記事では図付きで説明されていました。
https://qiita.com/panda11/items/e28ae434c0dd64a2dbb7
サンプリング周波数は、取得したい周波数の2倍以上である必要があります。今回は50Hzの2倍以上である100Hz以上でサンプリング出来たらいいのかな?と思います。
ADコンバータの分解能と周波数
脳波が数μVで変動することを考慮してADコンバータの分解能を決める必要があります。
▼参考値として、以下の記事で紹介されているオシロスコープの場合、分解能は8bitや12bit、サンプリング周期は数百MHz以上になるようです。
https://www.digikey.jp/ja/articles/fundamentals-of-8-bit-versus-12-bit-oscilloscopes
▼OpenBCIのボードは24bit、250Hzか125Hzです。チャンネル数で変わります。
▼OpenBCIで使われているADCはADS1299です。EEGへの利用が想定されており、低ノイズのようです。
https://www.ti.com/product/ja-jp/ADS1299
https://www.digikey.jp/ja/product-highlight/t/texas-instruments/ads1299-afe
▼他のバイオセンシングAFEと比較すると、チャンネル数が多いです。
オシロスコープの分解能と比較しても、かなり小さな電圧を測定しているという印象です。
▼24bitのADコンバータについて解説しているトランジスタ技術の記事がありました。
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/support/2010/sensingUSB/S06.pdf
秋月電子ではオーディオ用やロードセル用で24bitのADコンバータがありました。
▼24bit、96kHzのオーディオ用ADコンバータ
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g112988
▼24bit、80spsのロードセル用ADコンバータ
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g112370
▼実際に利用して検証された方の記事がありました。
http://www.easyaudiokit.com/bekkan3/PCM1808/PCM1808.html
Mouserでは24bitのADCが大量に扱われていました。
▼用途に合ったものを購入できそうです。
▼さらに高い分解能だと、32bitもあるようです。
スイッチサイエンスで脳波と調べると、販売が終了しているものが出てきました。
▼チップの分解能は24bit、周波数は250 SPS~32 kSPSです。
▼検出脳波パターンにAttention、Meditation、Eye Blinkがあります。
電極の種類と配置
非侵襲方式の場合は、電極を頭皮やおでこに固定することになります。
▼以下の記事で脳波計の電極の種類について説明されていました。
https://www.macnica.co.jp/business/ai/manufacturers/innereye/136972
▼OpenBCIでは筐体は3Dプリントで自分で出力して、電極などの部品だけ購入することができるようになっています。
電極の種類は色々あるようですが、筋電用と脳波用は重複するところがありそうです。
▼OpenBCIでは脳波、筋電図、心電図を同時に測定する方法が紹介されていました。
https://dynabrain.jp/pages/how-to-multi-bio
▼先程の筋電位センサ用の電極パッドだと入手しやすそうです。
▼Amazonでも販売されているようです。
▼こちらの記事では筋電を測定するときの電極について紹介されています。
https://note.com/ss_sports_lab/n/n609edd7697fd
▼こちらの記事では脳波測定時の電極の配置について紹介されています。国際的な基準があるようです。
https://www.macnica.co.jp/business/ai/manufacturers/innereye/136852
最後に
今回調べてみて、大体利用されているような分解能や周波数を知ることができました。とはいえ実際に測定してみないと分からないので、部品を購入して製作してみようと思います。もちろん侵襲方式と比較すると、ノイズになる要因が多すぎるので、正確には測定できないかもしれません。
▼侵襲方式でApple Vision Proと組み合わせている事例がありました。開頭手術はせず、頸静脈から脳の血管内に挿入するようです。
データを取得できたとしても信号の処理ができないといけないので、FFTなどの処理についても勉強しようと思います。Spresenseのマイク入力に対するFFTを試したいところです。
ちなみに、植物の場合は神経細胞が無いので、他の仕組みがあるようです。
▼植物の概日時計がネットワークになっているという記事がありました。研究室で他のメンバーが研究しているテーマです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/56/1/56_033/_pdf